訪日観光客の増加や働き方改革など、時代の変化とともに不動産のあり方も様々に変貌を遂げる昨今、ホスピタリティ、オフィスセクターに留まらず、様々な不動産セクターでリポジショニングの成功例が台頭しています。バリューアッド投資への注目がますます高まる中、この投資戦略の魅力とその道でのキャリアについて、現役シニアジェネラルマネージャーのAさんに伺いました。
Aさんについて：
東京大学工学部卒業。ミシガン大学院にて金融工学博士号取得。総合商社にてプライベートエクイティ投資、外資系不動産投資ファンドおよび開発会社等で計10年程従事。
バリューアッド投資とその他の不動産投資戦略における主な違いとは？
Aさん：通常の不動産投資では、投資タイミングと不動産マーケットを的確に捉える事が最も重要で、その上で、土地・建物そのもののハードとしての担保価値に焦点が当てられる傾向があります。一方、バリューアッド投資は不動産のハードよりもソフト、具体的には不動産を如何に運用してキャッシュフローを生むかに焦点が当てられます。従って、バリューアッド投資は産業用不動産やホテル等のオペレーションがキーとなる不動産への投資がメインとなり、オペレーターアレンジ、オペレーション改善といった経営的な観点とリノベーションや開発等、設計・デザインの創造的な観点が必要になります。
バリューアッド投資がほかの戦略よりも適する市場環境や状況は？
Aさん：競争相手が多く差別化が必要、市場が過熱してCap Rate（価格）での勝負となっている、既存物件をそのまま運用するだけでは最終利用者のニーズに応えられないといった市場環境や状況にておいてはバリューアッド投資の観点が必要となります。
繁忙期のタイミングと1日の業務について教えてください。
Aさん：物件売買のクロージング期間が一番忙しくなります。典型的な一日としては、レンダーとの交渉、取引相手先との契約内容の交渉と担当弁護士とのレビューを並行して進めつつ、その進捗とサマリを毎日社内報告。同時に、クロージングに必要なレポートや書類を各コンサルタント（司法書士、保険会社、不動産鑑定事務所、税理士事務所、会計事務所、エンジニアリングレポート発行会社等）に依頼し、レビューします。クロージング直前では、膨大な書類の捺印フローやデリバリーのアレンジ、お金の授受のための口座開設と口座への入出金フローと額の確定も行います。上記のマルチタスクを一日中ひたすら行う形ですね。
アドホックタスクへの対応はありますか？
Aさん：地上げをしたことがあります。開発プロジェクトのために地権者から土地を買い取る際に、環境保護を訴えてる地権者から反対を受けました。地道な交渉と説明、意見の吸い上げと計画への地権者意見の反映等、慎重に行わなくてはなりませんでした。
バリューアッド戦略を扱うプロフェッショナルとして最も重要なスキルとは？
Aさん：誰が不動産を最終的に利用してフィーを支払うのか、彼らにどのようなニーズの変化が起きているのか、コモディディ化しているアセットをどのように差別化できるのか、を素早く正確に察知できるスキルが最も重要です。これに加え、実際のバリューアッド実行時には設計会社、運営会社、デザイナー、工事請負業者等と協議し方向性をまとめる必要がある事から、マルチタスカ―で複数取引先をまとめるプロジェクトマネジメントスキルが必要となります。
アクイジション・アナリストを雇う際、面接ではどのような質問をしますか？
Aさん：
・エクセルはマウスを使用せずキーボードだけでフィナンシャルモデルを素早く作成できるか。ちなみにエクセル以外に、普段パワーポイント、Whatsapp、Zoom、GoToMeeting等をよく使用します。
・現在の不動産マーケットと将来予想に基づいて、どのような不動産に投資するのが良いか。
・箱物（ハードアセット）を利用するビジネスが今後どのように変化していくと思うか。
・投資する際に見るべきポイント、キャッシュフローの特徴、投資後アセマネする際の違い、賃料スキームの違い等に着眼し、レジデンシャル、オフィス、ホスピタリティ、インダストリアル、ヘルスケアなどの各不動産カテゴリーの特徴を不動産投資の観点で説明してもらうほか、REITの仕組みについても説明して欲しいですね。
最後に、日本の不動産マーケットの最新情報を普段どこで得ているか教えてください。
Aさん：日経不動産マーケット、日経テレコン、週刊ホテルレストラン、不動産サービス系エージェントのレポート、大手デベロッパー・電鉄会社・REIT・ホテル運営会社・不動産投資ファンドの開示情報、等。
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