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Writer's pictureAtlas Recruitment K.K.

キャリアインタビューvol.4:コロナ時代に求められる働き方対策

新型コロナウィルス感染症の世界的流行を受け、国内の多くの企業で「働き方改革」への取組みの遅れが露わになりました。リモートワーク等の柔軟なワークスタイルの主流化に向け、今、企業に必要とされる具体的な取り組みとは?

今回のキャリアインタビューでは、前号でもご協力いただいた人事統括エキスパートのAさんと、米国・日本の両国で女性経営者として活躍してこられたBさんから、経営者向けのアドバイスを戴きました。

 

コロナ時代への突入に、働き方改革が加速しつつありますが、具体的にどのような取り組みが企業に求められているのでしょうか?


Bさん:今後、企業に求められるのはジョブ型雇用への移行です。これには経営層がこれまでの評価制度を変え、主導していかなくてはなりません。まずリモートワークやリモートマネジメントを支えるシステム構築が必須となるのは当然ですが、最も重要なのが評価軸の改革です。私は日本で企業の経営に携わって初めて「勤怠管理」、「予実管理」という言葉を学びましたが、どちらも過ぎ去った時間や数字の管理に集中していて、疑問を感じました。今後、互いに顔が見えない働き方が主流となっていく上で、真にジョブ型雇用への移行が問われています。透明性と信頼、リアルタイムでの進歩把握が更に重要になります。


評価基準は業種により異なりますが、個人とチームのそれぞれに対して明確な評価軸を提示し、経営・管理側と社員の間に信頼関係を構築することが必要です。例えば、成果物、就業時間に対する生産性、新規クライアント獲得に加えその質を評価する。コミュニティへの貢献、制作物の優越性、収益、また管理職にはリーダーシップスキルなど、One-on-One面談で評価します。各業種・役割に応じた評価対象とターゲットを明示し、その達成率を定量的に測ります。

ジョブ型雇用への移行に際して、欧米に比べ専門性の低い日本の大学教育との相性が気になりますが。


Aさん:雇用体型の移行には、大学・専門教の改革も急がなくてはなりません。日本電産の創業者である永守重信会長が日本の大卒が即戦力にならないことを問題視し、京都先端科学大学の理事長として世界人材の創出に焦点を当てた教育改革を行ったのは記憶に新しいところです。日本の大学、また終身雇用下の企業においては、ジェネラリストが育ちます。部署移動を重ね、自分の適性を見出して行くのも悪いとは言いませんが、最終的に役員層にエキスパートがいない。今こそエクスパティーを突き詰め、強みをさらに強化し会社を変えていくことに目を向ける時ではないでしょうか。


リモートワークを推奨する会社が増える中、管理職から「管理しずらい」などと戸惑いの声も聞こえます。元々日本ではバブル期入社、今後は氷河期入社とされる世代が管理職に就くこと自体が課題と見られていますが、会社としてどういった対策ができるでしょうか?


Bさん:根本的なところですが、適材適所の人事で組織(チーム)力を上げることです。


Aさん:今回のパンデミックによって、世界中でマネージャーがその力量を試されていますが、これまでのマネジメント方法の傾向に基づいて、成果が二極化していると私は感じています。もともとマイクロマネジメントの傾向がある方々は、部下が見えないことで不安になり、余計にマイクロマネジメントが強まり、部下もストラグル(葛藤)します。一方、従来から部下との間に信頼関係を築き、エンパワメントができている方々は、個々が自分の役割やタスクを認識し、パフォームしていて、生産的に効率良く働けている。


対策としての適材適所に関してですが、外資系でも日系企業でも、ディレクターを誰にするか検討する時、高パフォーマー、アチーバーを選んでしまう傾向があります。しかし、「名選手、名監督にあらず」という言葉にあるように、高パフォーマーはテクニカルエキスパートとし、プレイヤーとしてはナンバーワンではなくても、人から人気を集める人を選ぶべきです。そのためにはまずタレントアセスメントを行います。対象者の自身に対する理解と、周囲からのパーセプションを収集し、トランスペアレント且つ全てを円滑に進める配慮をしながら本人たちと話合います。こういったアレンジメントは、会社のウェイストマネジメントにも繋がります。


ちなみに、これは採用面接の際にも言えることで、採用側は募集しているポジションに本当に必要なスキルと、そうでないスキルをしっかりと把握した上で面接に望むことが重要です。例えば、優れた調査マン、研究職に就く人にはとても頭の回転が速く、口が追いつかないため吃ったり、オーガナイズされていない喋り方をする方も多く、面接での印象は必ずしも良いとは言えません。


Bさん:私は経営者として新しい会社に就任した際、100名を超える全社員を一人一人面談し、組織として必要があれば人事の再配置を行いました。大企業では難しいかもしれませんが、経営者として、まずは個々の社員の得意不得意を知り、ケアすることが重要です。社会人は大人であり、プロフェッショナルです。個が活躍できるフレームワークさえ作れば後は自分で仕事をこなす力がある、と信じることが鍵です。


最近「ウーマノミクス」の産みの親であるキャシー松井氏が『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方・・・』について単行本を出版しました。女性社員の活躍を推進するための具体的な対策について書かれていますが、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の課題について、経営側が理解すべきポイントを教えてください。


Bさん:日系企業に就任した際、女性正社員の少なさが特徴的でした。また、非常に優秀な女性が上に行けないことと、優秀な女性には独身者が多いこと。もちろん日本でも、外資系などではトップがフレキシブルで、女性が活躍していた例も見ましたし、私がいた外資系デザイン事務所では、グローバルで53%が女性でしたし、東京支店も同じような数字でした。しかし、日本企業では、D&Iがまだまだ進んでいないと思います。興味深いことに、子育て中の女性の働きやすさに関して、以前「男性上司は応援してくれたが、女性独身上司が一番厳しかった。」という声を聞いたことがあります。


なるほど・・・一概に女性に対する男性の理解の欠如が問題ということではないのですね。

Bさん:子育て、介護は一過性のものであると認識し、その間のキャリアパスは平坦であっても、辞めずに続けることが大事だと思います。上司は真摯に話し合い、理解し合い、サポートするという取り組みが必要です。

Aさん:D&Iの課題は国や地域によって様々ですが、日本における極日本的な課題は、シニオリティとヴォイシングだと思います。シニアが偉そうに振る舞ったり、会議の司会者、意思決定役をすべて自ら行ってしまうことで、若手がシニアに物を言えず、育たない。会議参加者がランダム且つフラットに並ぶビデオ会議は、上座下座の壁を取り払い、この課題に対し有効なツールではないかと感じています。シニアは若手の開発に注力すべきです。


世代に関していうと、ミレニアル世代以降の年代とは、価値観に関する世代ギャップが大きいことの認識と理解が重要です。日本の典型的な50代は、お金を稼いで物を所有することに価値を感じるため、仕事はガンガン働いて稼ぐことが目標で当たり前、という考え。ミレニアル世代は物にあふれた時代に育ったせいか、物欲が少ない傾向にあります。その代わりに心の豊かさを重視し、環境保護、人権、フリーダム、フレキシビリティといった部分を重視しています。


Bさん:ライフスタイルや趣味を大切にすることは、とても大事なことだと思います。私の個人的な元気の原動力は何にでも興味を持つことで、社員にも個人ブランドを作り上げることの重要さを伝えてきました。職場、仕事の外で人脈ができることは、思いがけないビジネスチャンスのポテンシャルでもあり、会社にとっても有益でしょう。趣味に費やす時間が仕事のそれを上回ってしまうのは困りますが(笑)。


様々なライフスタイルや価値観を持つ社員をまとめるために、コーポレートブランディングが有効だと聞きますが、具体的にどういった取組なのでしょうか?


Bさん:コーポレートブランディングとは、会社に対するいわば宗教的な信仰心を創出するものです(笑)。経営ビジョンとは別で、社員の心を一つにまとめるスローガンをコーポレートビジョンとして掲げます。経営層が勝手に決めて押し付けるのではなく、社員全員を巻き込んで、「個の夢と社の夢が交わるところ」を定め、心のよりどころ、会社の風土を醸成します。会社の強みが見失われているならば、再認識するとても良い機会ですし、社員が会社を好きになることで、モチベーションも上がります。

お二人とも、インタビューへのご協力ありがとうございました。最後に、下記の抜粋で締めくくりたいと思います。


これから先、若い世代で優秀な人を採用しようと思ったら、旧来の価値を押し付けていては大変なことになります。多様性を高めるための取り組み無くして人材争奪戦には勝てません。今日から改革を始めましょう。」(『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます。励まし方、評価方法、伝え方 10ヶ条』キャシー松井著、中央公論新社、2020年、P145)

 

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